ひつじ村の兄弟

12月19日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

40年ぶりの二人乗り 秘密のひつじが導く先は―。

北欧アイスランド ひつじを愛しすぎた老兄弟が巻き起こす、まじめでおかしな大騒動

INTRODUCTION


あらゆる種類のヴィジョンやスタイルをもつ“独自で特異な”作品群が選出されることで知られる、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」。1998年の導入からまだ歴史は浅いものの、キム・ギドク、ロドリゴ・ガルシア、ホン・サンスなどの名だたる監督たちがグランプリを獲得し、その才能を世界へ知らしめてきた。そして、第68回を迎えた同映画祭「ある視点部門」からまたひとつ、世界をざわつかせる鬼才が輩出された――北欧アイスランドが生んだグリームル・ハゥコーナルソン。日本では全く無名の監督が、黒沢清監督や河瀬直美監督を含む計19本の強豪をおさえ、本作で見事にグランプリを獲得。長編わずか2作目にして世界最高峰の称号を手にした。

力強く雄大な自然を舞台に、40年間不仲の老兄弟と羊の“絆”と“愛”を独特の切り口で描いた本作。生きものたちの日常的な風景が、とある事件で一変。一気に窮地に追い込まれてしまった人間の意地と覚悟が可笑しみたっぷりに映し出される。ヒューマニズムとユーモアを見事に同居させ、そこに垣間見える皮肉な顛末が人間の深淵をなでるように刺激する、まったく新しいタイプの人間ドラマと言えるだろう。長きにわたって関係を断絶してきた老人2人のあまりに突飛な兄弟愛の行方は、観るものに味わったことのない驚きと感動をもたらしてくれるに違いない。

INTRODUCTION


近年の“北欧ブーム”の中で、とりわけ多くの人を魅了してやまないアイスランド。 日本の北海道と四国を合わせた程度の面積で、極寒の北極圏に存在する島国だ。オーロラや温泉、火山や氷河などの印象が強いが、世界平和度ランキングや男女平等度ランキング、世界ご長寿(男性)ランキングで世界第1位、乳幼児死亡率は世界一低く、結婚は100%恋愛結婚という・・・暮らすも生きるも人間にとってとても優しい国であり、実に人口25万人程度に対して羊の数は100万頭という“ひつじ大国”でもある。劇中に登場する羊はアイスランディックと呼ばれる、純血家畜用ヒツジとしては世界最古の品種だ。本作はまさに、アイスランドならではの羊と人間の営みの風景を活かした唯一無二の映画と言えるだろう。

物語は、羊のフワフワモフモフの造形とはうらはらに、牧羊で生計を立てる人々の質素な生活ぶりと、家畜が疫病に見舞われる悲劇、そのために生活が脅かされる酪農家たちの苦悩がリアルに描かれる。その一方で、アイスランド辺境の壮大な自然とそこに息づく人間と羊の悲喜こもごもは、生きものを愛しともに生きることの喜びと困難を、どこか寓話のような独特の世界観で映し出す。そして、忙しなく日々を送る私たちの心に穏やかな時間を注入するのだ。

STORY


アイスランドの人里離れた村で、隣同士に住む老兄弟グミー(シグルヅル・シグルヨンソン)とキディー(テオドル・ユーリウソン)は、生活の全てを羊の世話に費やして生きてきた。先祖代々から受け継がれて来た彼らの羊たちは国内随一の優良種とされており、彼らは毎年のように優勝を競い合い、どちらの羊が本流を受け継いでいるのかを争っていた。

互いに先祖代々の土地や生活習慣を継承し合う一方で、グミーとキディーは40年もの間、全く口をきかないほどに不仲な兄弟だった。

ある日、キディーの羊が疫病に侵され、村全体が恐怖にさらされる。

STORY


保健所は、感染の恐れがある地域全ての動物を殺処分することを決定。これは、収入源のほとんどを羊に頼る酪農家たちにとって死刑宣告も同然であり、土地を棄てざるを得ない者も多くいた。しかし、グミーとキディーは そう簡単に諦めることはせず、それぞれの方法で窮地を切り抜けようとする――キディーはライフル銃で、グミーはその機知に富んだ才覚で…。

しかし、保健所の立ち入り調査が迫るに従い、兄弟は絶滅の危機にさらされた先祖代々の優良な羊を守るため、そして彼ら自身のため、力を合わせなければならなくなった。40年という長きに渡って兄弟としての関係を断絶してきた彼らにとって、それはとても困難なことであるはずだったが、「愛する羊を守りたい」その思いが彼らを再び結びつける。それは、2人がある重大な秘密を共有することであり、その秘密が彼らを大胆で無謀な行動へとかきたてることとなる。

はたして、グミーとキディーと羊の運命は――?

STAFF



1977年生まれ。プラハの舞台芸術アカデミー(FAMU)を卒業した。卒業制作である『Slavek The Shit』は、国際的に知られる最初の作品となり、2005年のカンヌ映画祭シネフォンダシオン部門に選出された。この作品は、12の国際映画賞を受賞し、シカゴ国際映画祭では"シルバー・ヒューゴ賞"を受賞。次の短編作品『Wrestling』は、2007年のロカルノ国際映画祭でプレミア上映され、25の海外映画祭に出品。近年のアイスランド映画で最も注目された作品となった。

CAST



1955年7月6日生まれ。 俳優・コメディアン・監督・脚本家。 1970年代後半以来、多くの映画やテレビシリーズに出演。アイスランド国立劇場でも舞台に立っている。


1949年8月21日生まれ。 俳優。ロンドンの演劇スタジオ(The Drama Studio in London)で学位を取得。1978年から1989年までアクレリ劇場(Akureyri Theatre)で、1989年からはレイキャビク市立劇場で舞台に立つ。数々の映画やテレビシリーズに出演し、多くの賞を受賞している。